ヒューマンエラーの発生率と原因や対策!トヨタ流の仕組み化を実践
仕事をしているとどうしてもミスを起こしてしまいます。
そんな時にあなたの会社ではエラーやミスが発生した時にその人を責めていませんか?
トヨタの社訓でもある「人を責めるな仕組みを責めろ」と言われている通り仕組みを見直すべきです。
こういったデータを理解し実際にどうすればミスをなくすことができるのか深掘りしていきましょう!
今回はヒューマンエラー学の視点と失敗の科学いう本を参考にご紹介します。
意図せず起きたミスはどう対処すればいいかがわかります。
ヒューマンエラーとは?
ヒューマンエラーとは人が意図せずに引き起こしたこと(ミスや事故)のことです。
一般的に言われる「ミス」のイメージです。
例えば「車のブレーキを踏んだと思ったらアクセルを踏んでしまった」というのは意図していないことが起きていますよね。
そのヒューマンエラーを「事前に回避すること」と 「エラーが起きた時の対処法を定めること」を目的とすることが ヒューマンエラー学です。
ヒューマンエラーの限界『100万分の9』
フューマンエラーはどうしても防ぐことができないと根拠付ける数字があります。人は1000回に3回はミスが発生し更にそのことに気がつかずに見落とす事も1000分の3の確率となる為、掛け合わせると100万分の9となります。
ヒューマンエラーによるトラブルの確率を100万分の9以下にすることは極めて困難なことです。
イメージとして大量生産のメーカーの品質管理では『10PPM』が品質管理の限界と言われています。『10PPM』とは100万分の10の事を言います。
機械も人が操作する限りミスやエラーをゼロにすることはできませんが、せめて限界の100万分の9の発生率に近づけたいところです。
そのために発生確率を抑えるという地道な取り組みが重要です。ミスやエラーを個人に押しつけず組織として改善に取り組むことをしなければなりません。
ではどのようにして取り組めばいいのでしょうか?
まずはエラーが発生する原因について理解しましょう。
ヒューマンエラーが起きる原因
意図せずに起こるエラーは3パターンあります。それぞれ見ていきましょう。
①勘違い・思い込み(思考段階)
人の認知システムによるエラーで「見違い」「聞き違い」「勘違い」などです。
小さなエラーであるため気づきにくいという危険性があります。
にげんん は さしいょ と さいご の もさじえ あいてっれば
じばんゅん は めくちちゃゃ でも ちんゃと よめる
上記の内容もなんとか読めたと思います。こういった小さな文字の間違いに気づきにくい部分です
「いつもやってるから大丈夫!」という正常性バイアスがかかって小さな間違いをしやすくなります。
②スリップ(行動段階)
環境が変わっているのに変化に対応できず、いつもの行動をとってしまってしまうことでエラーが起きるパターンです。
癖が抜けないことで意図せずミスをしてしまいます。
回数を重ねたベテラン職人でも「環境を変えるとミスしやすくなる」といったことがあります。
③し忘れ(記憶段階)
これは単純に「忘れること」で起こるエラーです。年齢にも関係してくることですが、メモやチェックリストを使ったりする対策が有効的なものです。
ヒューマンエラーが起きるポイント
エラーは事実だけでなく”原因”に目を向けることが大切です。精神論だけではエラーは回避できないということを理解しましょう。
①エラーを気にしていない
管理組織の価値観による問題が多いですが、バイアス(思考の偏り)や不適切なリスク評価でエラーをそもそも気にしない思考になっている場合があります。
“これくらいは大丈夫!”とリスク管理が甘くなっている組織は危険視号です。
どこまでリスクを取るかは組織によって変わりますが起こりうるエラーやリスクを正しく認識することが大切です。
リスク管理の強化やリスクに対するスタンス(行動指針)を共有することで防ぐことができます。
②エラーが起きやすい構造
環境の問題による原因も多いです。間違ったオペレーションやエラーによる教訓が入ってないマニュアルといったエラーが起きやすい設計になっている状態です。
これは個人レベルでは解決できない状態です。
エラーが起きやすい部分の設計を見直したり、エラーを教訓として改善する仕組みが大切です。
オペレーション見直しやエラーの教訓化を徹底し全体的な改善が必要です。
③個人の能力・機能低下
個人のスキルやモチベーションの問題でおこるエラーです。「慣れ」「スキル不足」「疲労・ストレス」「動機付けの不十分」によってエラーが起きてしまっているパターンです。
基本的に組織内の場合は②との関連性が大きいですが、対策は違います。
悪い職場環境によってストレスが溜まっていたり、責任感やモチベーションがない状態は危険です。
できるだけ慣れやストレスが悪化しないような環境作りや責任感が持てる体制にすることが大切です。
組織としての仕組み・制度改善」や「個人の自己管理意識アップ」が必要です。
④システム使いこなせてない・使いにくい
システムの問題によるエラーで操作する人間が使いこなせてない場合に起こります。操作間違いで問題が起きてしまうパターンです。
あらかじめシステムを使いやすくミスが起こりにくい設計にし研修を行ったりすることが大切です。
対策としては業務システムのUX改善や教育をすることです。
※UX(User eXperience)ユーザー体験、ユーザーの使いやすさ
ヒューマンエラー防ぐ対策
ミスを防ぐにはどのようにすればいいのでしょうか?2つのポイントを紹介します。
ミスがある前提でタスク改善をする
どうしてもミスが発生してしまうことは理解できたと思います。そこでミスを前提とした改善が有効的です。
ミスの発生を前提条件として、ミスの発生率を高める「環境」や「仕組み・方法」を改善対象とし
品質・コスト・納期の向上を目的として取り組むように考えてみましょう。
良くない方法として「ミス」そのものにフォーカスをして改善対象にすることが多いですがそうすると落とし穴があります。
一番良くない事として個人の資質の問題であると考え、ミスをした犯人捜しが始まってしまいます。
その人を指導することで解決されたように感じますが、実際はどんなに優秀な人でもミスをおこすということです。
更にミスを無くせと指導され続けると精神的に安定することができず、より悪化する一方です。
Amazon(アマゾン)では良い作業をしている人の様子をビデオカメラで撮影し動画マニュアルとして共有し文書マニュアルが苦手な方でも分かりやすくしている例もあります。
品質・コスト・納期といった視点でミスを評価し影響度の高いミスに的を絞って発生率を下げ、流出防止する『仕組み』づくりを行いましょう。
投資対効果まで提示できると、すぐに判断がつけられます。
見える化でミス・エラーの防止
最近良く聞く言葉ですが、『見える化』を実施し、仕事のミスやエラーをどのように減らしていくのかご紹介します。
『見える化』とは今まで見えていない「モノ」や「コト」を見えるようにし、ミスやエラーの原因を突き止めることができます。
目的としては全体として共有しやすく、問題が明確化しやすいというメリットがあります。
では実際の事例をもとに何を「見える化」すればいいか考えてみましょう。
ミスの事例
発注処理の仕事をしている事務所での事例をもとに考えてみましょう。
この職場では受付箱に投函された依頼書をパソコンを使って発注処理しています。
本日の発注処理は「6件」でした。発注処理をしている途中で管理者が来て今日の発注処理を4件に変更する指示がありました。
変更指示を受けて、続きの処理を完了し担当者は帰宅しました。
しかし実際は「3件」の処理しかしていませんでした。1件発注忘れのミスをしていたのです。
これに近いミスの経験はあるのではないでしょうか?
ここでの問題は「発注忘れ」というミスが誰にも見えていません。
ではどのように「見える化」されていればよかったのでしょうか?
このミスを発生する原因となったのは発注処理数の変更指示です。
以下に注目してやりとりすれば発注ミスは防ぐことができました。
・処理数の変更がされたケースで依頼書を必要分に減らし
・変更指示の段階で担当者に残りの処理数を認識させること
この「減らす」と「数の認識」が見える化にあたります。
ミスの要因
ここで大事な仕組みとしては机の上にその発注書をおくことで見える化させた上でルールとして帰社する際は机の上をキレイにしておくということです。
必要な仕事だけを置いておくというルールがあれば自分自身や管理者もミスに気づくことができました。
異常の発生を見える化
実際に異常の見える化に注目して対策をおこないます。
まずは正常と異常の違いですが『正常』は、全ての事柄が予定通り行われ予定していたとおりの結果が得られる状態のことです。
『異常』とは正常ではない状態のことを言います。
仕事がいつもと違う違和感を感じ取れるようになっているかが肝心です。
『見える化』による改善はいつもと違うことに目を向け『異常』に対して先手を打つことで管理をします。
習慣化でミスを防止
『見える化』によるミスやエラーを防止するにはどういった所を意識して進めていけば良いでしょうか?
ミスやエラーを防止するための『見える化』改善ステップ
① 原因となる異常に対して優先度を高めてすぐに行動するという意識をもたせましょう。
②ミスの予兆や原因となる異常を見える化し改善することでミスを防ぐことができます。
③異常が全体の目にとまるようにし違和感が起きていることを理解できる環境作りをしましょう。
④ミスがおこった前の行動に注目して見える化できないか確認しましょう。
⑤プロジェクトごとにガントチャートツールを使って情報を全体共有できるようにしましょう。
これを繰り返すことで、ミスを防ぐことができます。
ヒューマンエラーが起きやすい組織の特徴
どういった体制の組織がエラーをおこしやすいのでしょうか?確認していきましょう。
効率重視の組織
「成果へのプレッシャーが大きい」や「個々の行動が孤立している」「感情排除」といった極端に効率重視の組織はエラーが起きやすいパターン。
大きくなるとお互いの仕事内容の把握などができなくなりエラーの確認がおくれる。またエラーが共有・教訓化されることも少なく、防げるエラーを防ぐことができない。
議論なし、批判なし、思想なし トップダウン組織
構成員が思考停止するのでエラーが起きやすくなる。さらに自主性を失うだけでなく、モチベーションまでなくなっていろんなところに悪影響が・・・「みんなでいい仕組みを作って、正しい方向性でやっていきましょう」
社会的使命感の欠如している組織
「作業をこなすのが仕事」となってはいけない。これも思考停止の原因であり、エラーを引き起こす。「自分の仕事がどう社会的な意義があるのか」を明確に持つことが大切。
仕事へのモチベーションにも影響するし責任があいまいだと責任がどこにあるかわからないと、だれも責任を取らないのでエラーに対する意識が薄まる。
責任者が明確になることでエラーに対する意識が高まります。さらにエラーを教訓化するような工夫が増しますね。
まとめ
ミス防止は確率との戦いで発生しない状態が当たり前です。良い行動をしていても、何も手応えがありません。
手応えがないとついつい止めてしまいます。続けるために良い行動を習慣化しましょう。
被害が出る前に未然に防ぐには異常に対して行動を開始させることが重要です。
そして良い行動を行う事を目的化させてしまいます。
ミスやエラーを防止するための良い行動を習慣化させる為に良い行動ができているか?
ガントチャートツールでタスク管理ができているか?
システムとして見えるようにして出来ていなければ行動を再開させるようにすると良いでしょう。